価値評価

スタートアップ企業知財価値評価の現状 ~技術競争力とPBR~

<現状>
一部のVC・技術分野においてFTO調査・知財DDがなされるのみで知財が収益性判断に寄与しておらず、スタートアップ投資実務に即した、すなわち財務データの不足を補い中長期的な収益性判断を可能とする点において、現行の知財価値評価手法を改良する必要があります。

<検討①:財務データの不足をどう補うか>
研究開発投資が将来の企業財務(ROE)や株価、市場付加価値(PBR1倍超の部分)にどのような影響を与えるかについての実証研究成果において、研究開発投資を特許(YK値)に置換しても同様の結論となるか。知的資本の価値(研究開発投資)は市場付加価値としてPBR1倍超の部分に織り込まれることを両者の相関関係で実証したモデル(柳モデル)を元に、YK値とPBRとの相関関係を検証すると、一部の技術分野(東証プライム市場の医薬品[東証業種分類]構成銘柄)において、YK値とPBRとの間に正の相関があることが確認されます(図1参照)。

<検討②:中長期的な収益性判断>
YK値の遅延浸透効果(現在のYK値が何年後のPBRに最も影響を与えるか)を検証すると、東証プライム市場の医薬品構成銘柄において、2023年のPBRに対して、2018年のYK値が最も影響を与え(図1の第1ピーク参照)、次いで2023年のYK値が影響を与える(図1の第2ピーク参照)ことが確認されます。研究開発投資の遅延浸透効果はTOPIX100構成銘柄において最多8年(6~12年)であるから、8年前の研究開発投資の成果物が特許出願され、第三者の権利化等阻止活動により5年前にYK値を取得し、現在のPBRに影響を与えるとの仮説を立てることができます。

<今後の展開>
・ 技術分類を用いた東証業種分離細分化(知財と相関の高い技術分野に限ります。ご容赦下さい)
・ 研究開発そのものの価値評価(説明変数の追加)

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